ギャラリー2008
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(2009年度ギャラリーはこちらです)
鷹取山 自然かんさつ会
ませんか。
*山歩きに適した服装、靴で参加しましょう 大前先生の説明は分かりやすく「なるほど」と思わずうなずいてしまい、自然を愛する 心が豊かになります。また、体調も良くなり家族の絆も深まります。 1. 日時:2008年12月6日(土) 午前9時30分 *雨天の場合は7日(日) 延期は電話で連絡します。 2. 場所:鷹取山周辺 3. 講師:大前悦宏先生(植物研究家) 4. 集合時間:午前9時20分(解散は午後3時予定) 5. 集合場所:JR東逗子駅前 参加費:無料 6.コース: 出発午前9時30分JR東逗子駅―海宝院―矢の根橋―神武寺 ―鷹取山公園―鷹取山展望台―住宅街(湘南鷹取団地)―鷹取1丁目付近の尾根道 ―湘南病院―京急追浜駅解散 (詳細はこちらです)
「JR東逗子駅集合」
前日の激しい風雨が嘘のような穏やかな朝でした。真っ青な空には白い雲がぽっかりと浮かんでいます。
教育会館の青い旗を持った担当者を見つけて受付します。大前先生も参加者がくるたびに一人一人に声をかけています。
予定時間に挨拶と簡単な諸注意をして出発です。
JR東逗子駅近くの田越川に寄ります。川には大きなコイが泳いでいるのが見えます。
でも、よく見ればコイだけではなく、もっと小さな魚もいます。大きなものに目がいってしまいますが、その陰に小さなものがいます。観察というのはそういうものに気付くことなのです、と大前先生のお話がありました。 線路と平行に添っている道を歩いていきます。
ふだんは気にもとめずに通り過ぎてしまうような見るもの見るものが観察の対象になります。
ピラカンサスは実をびっしりとつけてきれいですが、味はそうではないようです。鳥もそれを知っていて、食べるものが少なくなって初めて口をつけます。冬に食べられて鳥の体内を通り、種子が散布され、春に発芽します。そうやって子孫を残します。
アサガオの仲間ですが、この季節に咲く、夏のものとは違う種類のものです。
ニオイヒバもありました。目で見るだけでなく触れたり嗅いだりすることも大切です。
海宝院の石碑です。「禁葷酒」とあります。お酒は分かりますが、ニンニク、ネギ、ニラなどがいけないというのは、元気の出る食べものを修行の坊さんが食べるとめんどうが起ったりするからということです。
ここでも、次から次へとおもしろいものばかりです。
サルスベリはつるつるの木肌で登ろうとしても猿が滑っていまうということですが、触ると笑う木とも言います。そっと触るだけでも反応するというのはうれしいものです。
ナギは昔はお寺にたくさん植えられました。凪ぐということから海難を逃れることを願う意味もあるのですが、その実から灯りのための燃料が採れたからです。
ジンジャーはショウガの仲間です。ここにはジンジャーが密生していて、中には花をつけているものも見られました。
こどもたちに人気があったのはタラヨウです。タラヨウはハガキの言葉の元になった植物です。葉書というのは字の通りはじめは葉に書いたものだからです。字を書くと壊れた細胞内の物質が空気と反応して黒くなり字が書けるのです。
銀杏の葉は先が割れているものと割れていないものがあります。スカートとズボンなどと呼び、よくスカートが雌の木の葉ズボンが雄の木の葉などと言いますが、雌の木にも雄の木にもそれぞれの葉ができます。
桜の葉が色づいています。落ちている桜の葉を拾って観察します。葉柄の付け根近くにぷっくらと膨らんだ点が2つあります。それは蜜を分泌する蜜腺で、その蜜を求めてアリが寄ります。アリが寄れば葉を食べる虫が来にくくなります。つまり、桜はアリを寄せる蜜を分泌することにより、外敵から逃れているのです。
ソテツには雌雄があります。雄の木から雌の木に精子が移動します。
海宝院を出て矢の根橋につきました。大きなケヤキの木がありますが、葉は枯れて落ちているはずなのに、一部にふさふさと長い葉が茂っているのが見えます。ヤドリギです。ヒレンジャクなどの小鳥がヤドリギの実を食べます。その実はとても粘り気があり、小鳥が排泄してもなかなか切れません。そこで、小鳥はそれを取ろうと木になすりつけ、ヤドリギは新しい木に付き繁殖することができます。
カイヅカイブキは栽培種ですが、よく見ると葉が丸いものととげのようになっているものがあります。先祖がえりです。
神武寺に向かう道です。きれいなテイカカズラ、板のように葉がかたいイタビカズラなどいろいろな植物がいっぱいです。
杉が花をつけています。スギはまっすぐな木です。名前の意味は、まっすぐな木→杉、です。かわいそうな名前ですが、ハキダメギクがあります。ヒノキとサワラの違いは葉脈を見れば分かります。Yの字が見えればヒノキです。
カラムシは薄くて広い葉なので、掌を丸めてかぶせ、上からたたくとポンっと音がして破れます。昔はその繊維で服を作ったそうです。菜っ葉服です。
セイタカアワダチソウは黄色い小さな花を穂のようにつける植物です。観察した群落は背丈が小さかったのですが、刈り取られてから生えてきたものだからだそうです。いまはびっしりと生えていますが、4年後にはなくなってしまいます。根からほかの植物の生えるのを妨げる物質を出すのですが、やがて自分自身も生きていけなくなるのです。
「シダのことなら何でも聞いて」という先生。神武寺の沢はシダの宝庫だそうです。牧野博士もここで研究したということです。リョウメンシダ、カニクサ、ホシダ、クジャクフモトシダ、コモチシダ、ホウライシダなどがあります。
なかなか見分けられないシダですが、子どもたちは熱心に説明を聞いています。
神武寺につきました。外来種のヒメツルソバが茂っています。タデの仲間で、観賞用として栽培されていたものが広がっているようです。
上の写真はコモチシダ、左の写真はホウライシダです。
イロハモミジが色づいてきれいです。モミジには雄の木と雌の木があります。モミジの仲間は切ると甘い汁が出ます。モミジの名はもみず→モミジ、です。
サザンカは花びらが落ちます。ツバキは花全体が落ちます。ツバキは葉がつやがあるのでそんな名前になりました。ツヤバキ→ツバキ、です。
イヌマキの実は2つの実が連結しているような形です。赤く熟した方が食べられるところです。
神武寺には大きな木があります。「なんじゃもんじゃの木」と呼ばれる「ホルトノキ」もその一つです。ポルトガルの木ということで名付けられました。板状になった根、板根が特徴です。
近くにはアカガシの大木、ボダイジュ、イヌマキの大木があります。
ボダイジュの実は羽がついていて、ヘリコプターのように飛びそうです。降り積もった落ち葉の中に紛れているボダイジュの実をみんなで探しました。けっこう熱が入りました。
左はまだ、落ちていないボダイジュの葉です。
神武寺を後にして鷹取山に向かいます。
歩き始めるとすぐに道端にあるシャガの群落がありました。細長い葉をとりあげて「この葉の裏表はどうなっているんだろう?」両面ともつやがあるように見えます。元を見ると茎を抱くような形です。そちらがおもてでしょうか?それなら見えている部分は両方とも裏ということになります。見過ごしていることがたくさんあります。
とげのあるニセジュズネノキがあります。モウソウダケの藪があります。タケとササは似ていますが、どこで見分けるのでしょう?山道を行きます。
鷹取山公園です。見下ろすと、右手には観音埼、左手には追浜駅、その向こうにはみなとみらいのランドマークタワーやベイブリッジも見えます。石切り場跡はロッククライミングの練習をしている人たちがいました。オカメザサがあります。オカメザサはササという名前ですが分類上はタケです。タケノコの皮が成長すると落ちるのがタケ、落ちないのがササなのです。オカメザサにはその皮がありません。「それじゃ、オカメダケだ!」と参加した小学生が言います。鷹取山展望台にのぼると雲がかかっていましたが、富士山や江の島も見えました。
いよいよ最後の行程です。鷹取山公園から下ります。
歩き始めるとすぐに先生がわきにそれます。大きな葉のヤツデが花をつけています。針のように突き出して咲いているのは雄花です。虫のいない冬にヤツデはなぜ花を咲かせるのでしょう。ヤツデの花の糖度は50%ととても高く甘いそうです。暖かい日に小さなハエなどが蜜を求めてくるのです。冬には虫の食害を受けることが少ないのでヤツデはあえてこの季節に花を長く咲かせるのです。ビワもいまごろ花を咲かせますが同じです。植物たちはそれぞれの方法で子孫を残してきたのです。
ニシキギが紅葉しています。枝を取ってみると板状の突起があります。昔はこれでとげをとったそうです。
大前先生のお話しを聞いていると、ふだんは何気なく通り過ぎているような道もそれぞれが意味を持っていることがわかります。
道々お話をうかがいます。
先生はこどもたちに囲まれて歩いていきます。
公園からの道は湘南鷹取団地につながっています。住宅街を抜けると追浜駅に続く尾根道です。イチョウは枝が鋭角なのが雄の木、水平なのが雌の木だそうです。ノコンギクの花が咲いています。アザミもあります。このあたりでは秋ならトネアザミ、春ならノアザミ、海の近くならイガアザミと思っていいようです。
京急追浜駅でこどもたちと握手して解散です。一日おつかれさまでした。
大前先生の持つ植物の知識のごく一部だけをきょうはうかがえたのだと思います。植物についての説明、自然から学ぶ哲学などまじえて樹木・葉・花などの説明を聞くと世界が違って見えるようです。
子どもたちも真剣に興味を持って聞いていました。おとなにも大前先生の話、ひとつひとつがとても新鮮でした。
財団法人 横須賀三浦教育会館